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一つ多い、一人ぼっち。一つ少ない、一人ぼっち。どちらにも意味があるように。
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これが去年だったら良かったのに。
あなたはそう言う。
そういうことを、自分も言ったことがあるのを思い出した。

「去年だったら・・・」
あなたの望むように、コトが運ぶしかしてなかったでしょう。
だってみんな、あなたが喜べばいいや、に捧げてたから。
自分のことを自分のことのように喜べる自信が、僕にはなかったんだよ。
だから僕の事を、自分のことのように喜べる人がいるなら、あげちゃおうと思ったんだ。

僕は僕の人生を捨てようとしていたんだ。

それはとっても悲しい事だ。
そのドス黒く悲愴な影に気付かないあなたを・・・・・・
僕は最低だと嗤いました
僕は醜いと罵りしました
僕は偽善だと吐き捨てました
僕は愚かだと嘲りました

違いました。
なんてことないんです。

僕とあなたは別の人間なんです。
それだけのことが、分からなくて、気持ち悪くて、もがいていたんです。

僕の世界、あなたの世界。
あなたに見えないものは必ずしも、僕に見えないものではありません。
僕の物語、あなたの物語。
あなたの幸せは必ずしも、僕の幸せではありません。

僕には僕の目指す地平があること。
僕には僕の喜びがあること。
僕には僕にしか生きられない一生があること。
それだけのことなのに・・・
分からなかった。自分で認められなかった。
そのことが余計に僕を苦しめて、もどかしくさせていたんです。

僕のことを、僕が誰より、願っていたいんです。

こうして、もう一度・・・
——箱に入れた僕を僕が拾ってくれた。
——僕が生きる事を僕が選んでくれた。
それがひとつの喜びなんです。
僕にとって大事な大事な、宝物なんです。
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「仕えるものと護るもの」

***

それは突然の、襲撃だった。
風が切るように向かってくる中、一振り二振りをかわし、俺は主の盾となり矛となった。

生まれついたとき、少女が主人であることを認めた。
物心がついたころ、主人は自分にとって特別な女の子だと気付いた。
恋い焦がれる気持ちを、打ち明けた事はない。
今更口にすべき感情だと思った事がない。
彼女に仕えるもので居られたらそれでいい。
あらゆる敵から、護れたらそれで・・・。

回想に浸る間はなく、敵の一撃をかわし、追い打ちの一手を加える。

その隙に新手の刺客が飛び込んでくる。
やばい、と思った。
視界にそれを捕らえてしまった。
俺は、ほんとうにこれに弱い。
変な意味ではなく・・・きっと深い意味もなく・・・
「これ」を見ると、途端に体の力の入れ方が分からなくなる。

「これ」、すなわち、「巨乳」。

「うっ・・・」
ぐらっときて、体勢を保つのがやっとになる。
巨乳、じゃなくて、敵はまっすぐ主人に狙いを定める。

気持ち悪いような、異様に体が熱いような、
逃げ出したいような、飛び込みたいような・・・。
この場合対処法は目を閉じるしかなく、とにかく敵に向かって駆け出した。
距離感は身体でわかる。ぐらついていなければ、それほどの誤差はないはず。

トン。

首に手刀を食らう。
あれ?
まだ、まだのはずだ。あと三つは飛ばなければ。敵の間合いには入らないはずで・・・

「まったく、使えない」
言葉の冷たさとは180度違う、愛らしい声。
君が生まれてから13年。ずっと聞いてきた声。

反射的に開いた目が、彼女を横目で確認する。
鮮やかな手刀で自分の身体は崩れていく。

「おまけに弱いな」
愛くるしい唇に皮肉の笑みを浮かべる。
似合わないよそれ。そうさせてるのは俺だけど。

そして、風が鳴った。

たとえるなら、真空を内側から引き裂いたような。
一斉に空気が叫び声をあげた。

それがこの華奢な脚の一蹴りによるものだと、実際に体感した者以外は信じられないだろう。


巨乳の刺客はその一蹴のもとに倒れ、動けなくなっていた。
意識が微妙に残っている辺りが、憐れである。
肉体的に視覚的に、「彼女」を記憶すると、あとあとこわいことになる。
具体的に言えば、一目見るだけで脳内から非常事態のサイレンが轟々と全身に向けて放たれ、あらゆる神経が的確かつ素早い判断のもと、500mの距離をとろうと走りだす、なんてことがある。
結構な恐怖体験なので、いますぐ夢だったことにするのをお薦めする。
それでなんとか乗り切れるので、非常にお薦めである。

「けほっ・・・」
手刀の衝撃が引いていく。
手加減はしてくれたようだ。
主はしゃがみ込み、大丈夫?と声をかけてきた。
心配というより、あの程度の衝撃でそのザマはどうなの?という色が濃かった気がする。
うん、よく知ってるつもりだ、君のことは。

「しっかり頼むよ」
その、笑顔。
一度聞いてみたい。
それは、わざとなのか?
そんな顔されたら、どれだけ胸の中が大騒ぎするか、分かっててやってるのか?
こくこくと頷く間にも、咳がやまない。

これは、それなりに強い俺と、俺よりはるかに強い主人との、ちょっとした出来事のお話。

***

夢で見た二人組がツボだったので、いそいそと起こしてみました・・・
たぶん近頃みた数々のカップリングが一回溶けて頭の中で具現化された感じです。
ノーマルカプ中心の話ってそういえばまだネタにないので、あっためてみるぞう!
しがらみはとっぱらって
つまらないこというのは止めにして
あったかい飲み物と、甘いお菓子を持っていかないと
入れない夜の公園がある。

昼と比べて夜なのではない。
遊び疲れて気がついたら日が暮れていた。
そんな静けさと灯りのなさが広がっているんだ。

息を吐くと白く染まって、なんだか楽しくなる。
その公園でしか会えない友人を待っている。

頭の中の公園。
シーソーの端にまたがった。
がたんと揺れる。
これに乗れる子は君だけだから、ああやっと来たんだって安心する。

そこは大人の入れない遊園地みたいで
音楽の流れないパークを、二人で作った歌と笑い声で満たしてしまう。
それが二人のあそび。ゆうぎ。なんてゆうか、しぜん。らく。

お菓子と飲み物が少なくなると、そろそろ公園から帰る時間。
相手の持って来たお菓子と飲み物に感想を告げて、ついでにお別れの挨拶をする。
少しだけこわくなって、「またね」と付け加える。
いつ、この公園に来られなくなるのか、僕は少し不安なんだ。少し。
どこかでは、いつまでも、来られるんじゃって思っているから、笑顔で言える。

君と会うときはそんな気持ち。
頭の中は公園の中。
それはとても嬉しい。
「次は来れないかも」って不安が持てるところが、君とあそぶ楽しみのひとつ。
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